不動産に関する税金のおはなし
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私たちの生活の中で、税金は大変重要な役割を果たしております。
一般に税金は、大きなお金が動くときほど大きくなるといえるでしょう。
そうすると、私たちにとって一番大きな買い物で大きなお金が動くことになるマイホームの購入・売却についての税金はどうなっているのでしょうか?ここでは、不動産の購入・売却などにあたり基礎となる税金の話をしておきます。概略だけでもおさえておいてください。課税や控除の要件は非常に細かく定められておりますので、個別具体的な相談は公認会計士や税理士の先生にお願いしましょう。
と申しますのも、税金のことを考えないで不動産売買をしてしまうと計画通りにいかなくなってしまうからです。また、知っておくだけで無駄な税金を払わなくてもよくなることもあります。税金とは上手に付き合っていきたいと心から思います。
(以下の内容は、平成24年2月1日現在に施行されている税制及び平成24年度税制改正大綱に基づきます。)
取得に関する税金
印紙税
高額の領収書などを受けとった際、消印のされた収入印紙が貼られていたことがあると思います。
印紙税は、法律で決められた一定の文書を作成した際にかかる税金のことで、その文書に記載された契約金額や受取金額に応じてその額が定められております。
不動産の売買にあたり、印紙税が必要となる文書としては建築請負契約書、設計契約書、金銭消費貸借契約書、売買契約書、領収書などが考えられます。
収入印紙を貼らなかったからといって契約が無効になってしまうということはありませんが、過怠税が発生し、正規の印紙税よりもお金が余分に出ていってしまうことになりますので注意してください。
印紙税は売主・買主のどちらが負担すると決められているものではありませんが、契約書などは二通作成し、各自保有することが多いので、自分が保有する契約書に貼りつける印紙代は自分で負担する、つまり折半になることが一般的で、詳細については契約当事者で決めて頂くことになります。
登録免許税
不動産を取得した際、登記簿にその記録を残すことで対抗要件を取得します。この不動産登記を受ける際に負担する税金が登録免許税です。
不動産売買では、所有権移転登記、抵当権抹消・設定登記などが必要となりますので、登録免許税の負担も資金計画に入れておきましょう。
登録免許税は定額のものと定率のものがあります。たとえば所有者の名義をAさんからBさんに移すときは、不動産の評価額の○%、Cさんの抵当権登記を登記簿から抹消するのであれば不動産の個数×1,000円などといった具合です。
詳細はこちらの表を参照してください
登録免許税は、登記の申請を依頼する司法書士へ支払う(司法書士が法務局へ代わりに支払う。)ことが一般的です。見積書や領収書を受け取ったら、司法書士の報酬と登録免許税の内訳を確認しましょう。
消費税
消費税は不動産を購入した際にも発生します。
しかし、土地の売買には消費税はかかりません。建物は消費するもの(ずっと使っていると価値が下がってきたり、いつかは壊れたり老朽化してなくなったりしますよね。)であるのに対し、土地は消費されるということがないからです。
また、サラリーマンなどの個人から買う場合には、建物についても消費税は発生しません。消費税は、事業者が消費者から預かって国や地方に納める税金であるため、事業者から買う場合にかかるものなのです。
ですので、個人売主から買うときは、土地にも建物にも消費税はかかりません(不動産業者の仲介手数料には消費税がかかります。)。
売主 | 土地 | 建物 |
---|---|---|
不動産業者 | かからない | かかる |
個人売主 | かからない | かからない |
不動産取得税
不動産を売買や贈与などにより取得した際、有償か無償か、登記をしたかしていないかにかかわらず、取得後一回だけ課される税金です。ただし、相続によって不動産を取得した場合は課されません。
不動産を取得した場合、不動産を取得した日から30日以内に都道府県税事務所に申告します。土地や中古住宅だと取得後3~6ヶ月後、新築住宅だと取得した年の翌年の4月以降に納税通知書が送られてきますので、金融機関やコンビニなどで納めてください。
各種控除・特例
住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、一定の要件を満たしていれば所得税の還付を受けることができます(住宅借入金等特別控除)が、サラリーマンの場合、還付を受けるには確定申告をする必要があります。
住宅ローン控除では、年末の住宅ローン残高に1%を乗じた金額の所得税が還付されます。たとえば、年末の住宅ローンの残高が2500万円であれば、25万円の還付を受けられることになります。ただし、所得税を25万円以上納めていない場合、仮に18万円しか納めていないのであれば、18万円が上限となります(平成21年から、控除しきれない金額がある場合、住民税からもひくことができるようになりました。)。
この他、認定長期優良住宅の新築等した際の所得税額の特別控除、地震保険料控除などもあります。
保有に関する税金
固定資産税
固定資産税とは、その年の1月1日に土地・建物を所有している人が納める税金です。年の途中に売却したとしても、その年分の固定資産税は1月1日の所有者が負担します。ただし、売買契約の際に契約者間で按分して精算することが一般的です。
固定資産税は市町村に納める税金で、年4回に分けて都市計画税と一緒に納めることになります。
不動産が共有になっている場合、固定資産税は共有者全員が連帯して納めることとされております。納税通知書は、固定資産課税台帳にはじめに記載されている人のところに送られてきますが、その人だけが全額負担というわけではありません。
新築住宅の場合や認定長期優良住宅の場合などに、固定資産税の減額措置がありますので、ご自分の物件が減額対象かどうかはしっかり確認しましょう。
都市計画税
都市計画税とは、都市計画や区画整理に関する事業などの費用に充てるために徴収される税金です。固定資産税と同じく、その年の1月1日に土地建物を所有している人に対して固定資産税と一緒に課税されます。
売却に関する税金
譲渡所得
家を売却することにより利益が出た場合、原則として税金がかかります。これは特別なことではなく、たとえばサラリーマンが仕事をして給料をもらう際に課税されるのと同じで、利益(所得)があれば所得税が課されるのです。
譲渡所得の計算方法は次のとおりです。
譲渡所得=譲渡収入(売却価格)-(取得費+譲渡費用)
不動産の譲渡所得は申告分離課税となり、他の所得とは分けて所得税・住民税の計算を行うことになります。
特別控除・所得控除などもありますので、買値より売り値のほうが高ければ必ず課税されるというものではありません。
相続・贈与に関する税金
贈与税
贈与とは、無償(タダ)で自己の財産を相手方に与えることです。相続を原因として財産を取得した場合に相続税が課されますが、それでは相続税を免れるために生前に財産を贈与すればいいのでしょうか?
もし生前の贈与に税金がかからないとなると、相続で財産を取得した人との均衡を害してしまいますので、もちろん贈与にも贈与税という税金が課されることになっています。
贈与税は、受贈者(財産をもらう側)が、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に申告して納めます。
贈与税には110万円の基礎控除があり、実際には110万円を超える贈与が課税対象となります。また、祝い金や生活費のための財産の取得は除かれます。
また、住宅取得等資金の贈与の場合、一定の要件を満たせば非課税となることがあります。
相続時精算課税
贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つがあり、一定の要件に該当する場合には、相続時精算課税を選択することができます。この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を一体にした納税を行うもので、高齢者の保有する財産を早期に若い世代へ受け渡すことで、財産の流通や消費の拡大を図るために創設された制度です。
つまり、相続税と贈与税を一体的に課税することで、財産の承継の原因が贈与であっても相続であっても、財産の価値が変わらない限り全体の税負担を変えないようにすることで、相続を待たずして財産権を移転させることを可能とし、これをもって消費の拡大を期待することとした制度です。
適用対象となる贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子(子が亡くなっているときには20歳以上の孫を含みます。)とされています(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)。相続時精算課税の適用には、贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
なお、相続時精算課税制度の利用にあたっては、特に次の点に注意をしてください。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは、配偶者が居住用不動産の購入またはその建築資金を贈与されたときに、基礎控除の110万円に加えて、贈与された金額から2,000万円まで控除することができるという制度です。
この制度の適用を受けるためには、婚姻期間が20年以上の夫婦であることが条件とされております。そして、この控除を受けるためには、税金が発生しなくとも必ず贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に申告をしなければなりませんので注意してください。
相続税
相続を原因として財産権が承継されます。
相続により取得した財産に対して課税される税金が相続税です。相続税については基礎控除が厚く、次のようになっております。
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
また、上記の基礎控除の他に、各種の特例や優遇措置があります。
このため、相続税の課税割合は4.2%ほどと低く(国税庁発表2010年分相続税申告状況)、ほとんどの方が相続税とは無縁といるでしょう。
ただし、上記基礎控除の大幅な引き下げが税制改正で検討されておりますので、今後の動向に注意することが必要です。