法定相続と遺産分割協議
人を亡くされた悲しみを堪えて,少し気持ちが落ち着いた頃,残された方は亡くなった方の身辺の整理をなさると思います。
相続財産がどのような形で承継されるかは,基本的には被相続人の意思が優先されます。
後述する「遺言書」によって財産を分けて(相続分などを指定して)承継させるのがその代表例です。
遺言による相続分の指定がない場合は,法定相続分に応じて相続することになります。
法定相続分
相続順位 | 共同相続人 | 法定相続分 | |||
---|---|---|---|---|---|
第1順位 | 配偶者と子 |
配偶者 | 子 | ||
第2順位 | 配偶者と直系尊属 |
配偶者 | 直系尊属 | ||
第3順位 | 配偶者と兄弟姉妹 |
配偶者 | 兄弟姉妹 |
*複数いる子・直系尊属・兄弟姉妹間の相続分は相等しい
*嫡出でない子は,嫡出子の2分の1となる
*兄弟姉妹において父母の一方のみ同じくする者は,双方同じくする者の2分の1となる
ですので,まずは被相続人が遺言を残したかどうかを確認してください。
公正証書遺言のように所在がはっきりしているものはともかく,自筆証書遺言が金庫の中などから出てくるかもしれません。
遺言書が出てくれば,先ずは遺言書に書かれた被相続人の遺産分けの意思表示を尊重しましょう。
しかしながら,残された相続人にもそれぞれ事情があることと思います。そういった事情がまったく反映されていない遺言書が出てきてしまったら・・・
そのような場合には,遺言があったとしても,相続人全員で合意の上,遺産分割協議によって被相続人の意思とは異なる遺産の分け方が可能と解釈されております(遺言執行者がいない場合に限ります。)。
むろん,そもそも遺言がなければ,遺産分割協議で相続財産を分けても良いですし,後ほど上の記載した法定相続分に基づく分け方でもかまいません。
遺産分割協議
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遺産分割協議とは,相続人全員(一人でも欠けると無効)の間で話し合いを行い,被相続人の遺産を分けることです。
共同相続人は,遺言や審判によって禁止されていない限り,いつでも全員で分割の協議をすることができます。いつまでにしなければならないという決まりはありません。分け方は特に決められておりませんので,相続人間の合意で自由に分けることが出来ます。合意形成ができれば,遺産分割協議が整ったということになります。その証拠として遺産分割協議書を作成し,相続人全員が署名し,実印で押印します。
相続人の中に未成年者がいる場合,親と子の間で利益が相反することになりますので,家庭裁判所へ特別代理人の選任申立をしなければなりません。そして選任された特別代理人が,遺産分割協議に子の代理人として参加することになります。
では,どういう立場の人が遺産分割協議に参加できるのでしょうか?遺産分割協議に参加できる立場の人のことを相続人たる地位にある人といいます。
基本的には被相続人の相続人(第一順位相続人は子,配偶者は常に相続人)ということになります。もし被相続人より先に亡くなった子がいた場合,その子に直系卑属(孫,曾孫など)がいるときは,代襲によりそれらの人が相続人たる地位を承継します。また,包括受遺者や相続人から相続分の譲渡を受けた人も遺産分割協議に参加できます。相続分の譲渡は相続人に対しても第三者に対しても出来ますが,第三者への譲渡は関係が複雑になりますので,一般には相続人に対して利用されているようです。
話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合は,家庭裁判所に申立をすることになります。この場合,まず,家事調停(裁判所での話し合い)に委ねられます。それでも解決しない場合は家事審判という一種の裁判手続きによって解決を図ることになります。
いずれにせよ,時間も費用も掛かりますので,話し合いでの遺産分割協議で円満に財産分けをするのが,なによりかと思います。